新聞配達員・山口拓真さんが静かに退職を決意するまで
「辞めたいって言えたら、どれだけ楽だったか……ずっと、心の中でそう思っていました」
朝刊を届ける新聞配達という仕事。夜明け前に起き、風雨のなかバイクで住宅街を回る。 その仕事を10年間、淡々と続けてきたのが山口拓真さん(仮名・48歳)です。
真面目で責任感が強く、体調を崩しても「自分が休めば迷惑がかかる」と耐え続けてきました。 しかし、持病の糖尿病が悪化し、医師から勤務の見直しを強く勧められるようになったとき、 初めて「自分の人生を守るための選択」として退職代行という手段を選びました。
今回は、山口さんの実体験をもとに「なぜ退職代行が必要だったのか」を伺いました。
体験者プロフィール
山口 拓真さん(仮名)/ 48歳 / 新聞配達(業務委託)
夜中3時からの勤務を10年間継続。糖尿病の持病が悪化し、医師からも勤務形態の見直しを勧められる。人手不足の職場で責任感から言い出せずにいたが、最終的に退職代行を利用して退職。
夜の仕事は生活のすべてでした
		
	新聞配達の仕事はいつ頃から?
38歳のときから始めました。子どもが中学生になって、朝は妻に任せて自分は夜の仕事を選びました。 最初は体も動くし、黙々と配るのが性に合っていて。でも、気づけば10年経っていて、体の不調が出るようになって……。
		
	
		
	具体的にどんな体調の変化が?
糖尿病なんですが、あるときから朝にめまいがしたり、足がしびれるようになってきたんです。 病院で『このままだと取り返しがつかない』と言われて。勤務時間を変えるようにって言われましたが、代わりの人もいない。 『自分が抜けたら回らない』って、どうしても思ってしまって。
		
	
		
	辞めたいとは思っていた?
思ってました。でも辞めるって言葉が喉まで出てきても、口にできなかった。 責任感とか、仕事仲間のこととか、自分の生活のこととか、いろんなものが頭をよぎって。
		
	
		
	相談はできなかったのでしょうか?
家族にも言えませんでした。妻はパートで頑張ってくれてるし、子どもも進学でお金がかかる。 『今辞めたら、みんなに迷惑がかかる』って…。本当は、自分が一番限界だったのに。
		
	
		
	それでも続けてしまった理由は?
正直、自分にしかできないって思い込みがあったんです。 この時間にこのルートを回るのは自分しかいないって……。 誰にも頼れない、でも辞められない。その繰り返しで、気がつけば毎朝バイクに乗るのが怖くなっていました。
		
	
		
	朝が来るのが怖くなる、というのは?
前の日の夜、寝るのが怖くなるんです。 『また朝が来る。また行かなきゃいけない』って、布団の中で涙が出るときもありました。 それでも行く自分を『偉い』と思えたら救われたのかもしれませんが、 『何やってるんだろう』って自分を責めてしまう日々でした。
		
	
		
	退職代行を知ったきっかけは?
ネットで『退職 言えない』って検索したら、退職代行という言葉が出てきて。 『あなたの代わりに退職を伝えます』って書いてあって…。もう、その瞬間に気が緩んで、涙が出そうになりました。
		
	
		
	すぐに利用されたのですか?
何日か悩んで、無料相談をしてみたんです。すごく丁寧に話を聞いてくれて、対応してくれた方に『 体調が悪化してからでは遅いです。健康が最優先です』と言われて、やっと決心がつきました。
		
	
		
	実際に退職できたとき、どう感じましたか?
電話も出ずに済んで、あっという間に手続きが終わっていて。 『これで良かったんだ』って、初めて自分を肯定できた気がしました。
		
	
		
	今、同じように悩んでいる人に伝えたいことは?
辞めることって、恥ずかしいことじゃないです。むしろ、自分を守るための行動です。 退職代行を使うのは逃げじゃなくて、生き直すための手段だと僕は思っています。
今でも、職場に申し訳ない気持ちがないわけじゃないけど、それ以上に 『自分を大事にしていい』って、あのとき誰かに言ってほしかった。 だから今、僕がその言葉を届けたいです。
		
	まとめ
山口さんのようにまじめで優しい人ほど、 「辞めたい」と声をあげられずに、心も体もすり減らしてしまうことがあります。
それでも、「今辞める」という選択は、弱さではありません。 むしろ、未来の自分を守るための勇気ある行動です。
今は、無料で相談できる退職代行サービスも整ってきています。 「誰かに話すのも怖い」「責任を放り出すようでためらってしまう」—— そんなふうに悩んでいるあなたへ、山口さんの経験が少しでも心の支えになりますように。
一人で抱え込まないでください。 あなたにも、静かに辞めるという優しい選択肢があることを、どうか思い出してください。
そしてなにより、山口さんのように、これまでずっと頑張ってきたあなた自身のことを、どうか責めないであげてください。 踏ん張り続けた日々は、きっと誰よりもあなた自身が一番よくわかっているはずです。
少し肩の力を抜いて、「今こそ、動き出すときです」。あなたの人生にとって、その選択はきっと、間違いではありません。